「版」とは何か。またこの版を使った絵、「版画」ならではの魅力とは何か。版による絵は、同じものを複数作ることが出来るという利点から、古来、身近な伝達手段として親しまれてきました。なかでも江戸期に隆盛した浮世絵の美しさ、その水準の高さは西欧の人々をも魅了し、日本が版画の国である事を印象づけてきました。しかし、浮世絵は、明治に入ると先進的な写真術などにとって変わられ、かわりに銅版画や石版画など、西洋から導入される版種が増えて表現方法の枠が広がると、版画のもつ役割や意識が大きく変化していきます。そこには、この「版画」という言葉を生み出すきっかけとなった創作意識の高揚があり、版画が間接的な表現であるからこそもつ無限の可能性として、より自由で個性豊かな表現が展開され、現代につながっていきます。本展では、所蔵作品の近現代版画を中心に版種の違いによる「版の表情」に着目し、版画作品のもつ豊かな魅力をご紹介いたします。版画ならではの表現の奥深さ、面白さをこの機会に是非お楽しみください。