わが国の中でもとりわけ当県は、工芸技術の高い水準が維持されている地域として広く知られていま
す。江戸時代初期に、加賀藩主前田家の美術工芸に対する積極的な施策によって基盤が形成され、そ
の後、歴代藩主もこの方針を貫き、その発展を促していきました。明治維新後も今日まで、伝統は途
切れることなく引き継がれ、多くの名工を輩出し、全国的な評価を受ける芸術院会員、重要無形文化
財保持者に認定される人々も登場してきたのです。
日本芸術院は、明治40 年に文部省美術展覧会(文展)を開催するために設けられた美術審査委員
会を母体にし、大正8年文展が帝国美術院美術展覧会(帝展)に改められた際に、その運営主体とな
る「帝国美術院」として創設されました。その後昭和12 年に「帝国芸術院」、戦後22 年に名称を「日
本芸術院」と変更し、今日、芸術上の功績が顕著な芸術家を優遇するための栄誉機関として認知され
ています。
一方、重要無形文化財の指定制度が確立し、その「わざ」の保持者の認定(いわゆる人間国宝)の
措置がとられるようになったのは、昭和30 年のことです。それまで、「もの」に対する保護の制度は
ありましたが、伝統技術を体得している人間の「わざ」そのものを保護の対象にする制度はなく、25
年に制定された文化財保護法が、29 年に大幅に改正され、導入されたものです。
本展は、陶磁、漆工、染織、金工、刀剣、木竹、截金といった多様なジャンルにおける当県ゆかり
の芸術院会員、重要無形文化財保持者の名品を一堂に展示し、あらためて伝統工芸技術に対する理解
と認識を深め、今後の当県の伝統工芸の振興発展に寄与することを目的に開催するものです。