柴田是真(1807~1891)は、幕末から明治期に活躍した漆芸家であり画家です。
江戸両国に宮彫師(社寺の欄間や柱に彫刻を施す職人)の子として生まれた是真は、11歳で名工・古満寛哉に弟子入りして蒔絵技法を習得。その後、画家の鈴木南嶺や岡本豊彦に師事し四条派の画法を学びます。
天保11年(1840)王子稲荷に奉納した大絵馬「鬼女図」の迫真的な描写が江戸中の評判となり、まず絵画の分野で才能を開花させた是真でしたが、漆工においても、各種変塗の開発・復興を行ったり、江戸っ子好みの機知に富むデザインが人気を呼び、江戸随一の蒔絵師の地位を獲得します。
さらに漆工、絵画の双方に才を発揮した是真は、和紙に色漆を用いて絵を描く「漆絵」を発展させ、掛軸や画帖、屏風、額など多くの優れた作品を残しました。
明治維新後には、欧米で開催された万国博覧会に積極的に出品して高い評価を獲得し、政府の殖産興業政策にも貢献するなど、近代美術工芸の発展に大きく寄与。明治23年(1890)にはついに帝室技芸員にも任命されました。
近年人気を博している江戸時代の画家・伊藤若冲や河鍋暁斎がそうであったように、是真の洒脱なデザインと卓越した技巧は、現在では日本よりも欧米で高く評価され、多くの是真作品が海外に所蔵されています。
本展では、アメリカ・テキサス州サンアントニオ在住のキャサリン&トーマス・エドソン夫妻が収集した是真の漆工と絵画約70点が初めて里帰りし、日本に所蔵される博覧会受賞作等の優品約30点とあわせ、計約100点の作品を通して是真芸術の魅力を紹介します。
※会期中、一部展示替を行います。