サザンカは日本を原産とし、ツバキとともに冬枯れの季節に庭を彩る数少ない植物です。当苑では夏の『伝統の朝顔』に対して『冬の華・サザンカ』として、2001年より収集・展示を行ってまいりましたが、これらの品種や系統のなかには、「江戸サザンカ」、「肥後サザンカ」と呼ばれる独自の品種群が含まれています。
サザンカは大きく「サザンカ群」、「カンツバキ群」、「ハルサザンカ群」、「タゴトノツキ群」の4つのグループに大別されていますが、花は11月頃から2月にかけて、サザンカ群、タゴトノツキ群、カンツバキ群、ハルサザンカ群の順に咲いていきます。これらの品種はハルサザンカ群を除き、いずれも実生の変わり種から選抜されたもので、こうした品種の作り方は、日本の園芸文化の大きな特徴といえます。また、「江戸図屏風」(本館蔵)に描かれた江戸城内「御花畠」には、黄色や青色のツバキが描かれていて、これらの品種が珍しいものとして栽培されていたことがわかります。
当苑では人とサザンカの関わりを、文献(歴史資料)と現存の品種を材料として考察し、遺伝資源ならびに文化的な遺産としての二つの面から踏み込んだ、他に例を見ない展示を行います。