きものの輝き
伝統的なフォルムには、長い時間によって磨き出された洗練の美があります。と同時に、過去から伝わったちおう固定観念は、対象を古めかしく、現代に生きる私たちとは、何か別種のものであるように見せることもあります。なかでも「きもの」は、戦後、日本人の生活スタイルは大きく様変わりしたその陰に沈みこみそうにさえなりました。しかし、個人作家としての取り組みが進展するなかで、きものを成立させる素材、技法、色、模様亜gつぶさに吟味され、その結果、現代的で瑞々しい感性に満ちた制作が行われるようになりました。禁煙、さまざまなシーンできものを着用する人が少しずつ増えているようですが、こうした傾向も単なる懐古趣味を越えて、人々の意識が染織の本質を再認識しはじめたことを示唆するのかもしれません。今回は、きものや着尺、帯など、伝統的な形式に託された艶やかな染織作品の輝きを紹介します。
漆・木・竹工芸の美
漆、木、そして竹工芸、多くの材を自然から得ているこれらの作品もまた、その美しさが、単純に自然に由来するものとみられることが少なくありません。しかしながら、私たちが目の当たりにするのは作者の意志の下で切り取られた「自然」、周到に整えられた人工の美ともいえるものではないでしょうか。成形や加飾の段階を経て、自然本来の姿とは異質に転化された美の様態をご堪能ください。