めでたいきざし、このうえもなく縁起のいいことやその前兆、という意味を持つ言葉が吉祥(きっしょう)です。東洋では、富責や長寿、立身出世や子孫繁栄といったさまざまな願いを込めて、縁起のいいとされる文様、すなわち吉祥文様を絵画や工芸品に描くことが古くから行われてきました。
伊万里焼でも吉祥文様は、器面を飾る主要な意匠です。そのモチーフの多くは中国文化から影響を受けたものですが、日本独自のものもあります。この世の動物達の長だと考えられた特別な霊獣、すなわち龍、鳳凰、麒麟などの文様は中国文化の代表的なものです。誰もがよく知る松竹梅文様は、冬の寒さに耐え忍ぶ植物という意味で、これは中国文人の高潔な精神を象徴する「歳寒三友」に由来しています。そのほかにも、八宝思想にもとづく宝尽し文様などさまざまなものがあります。日本古来よりのものといえば、鶴は千年、亀は万年といわれる丹頂鶴と養亀の文様や、末広がりとして喜ばれる扇の文様などが知られています。
このような吉祥文様には、その願い事の種類によって、文様を描き分けているものが多くあります。今回の特集陳列では「辟邪・招福」「豊かな生活」「立身出世」「子孫繁栄」「不老長寿」「霊獣・霊鳥」というテーマで、伊万里焼の吉祥文様をご覧いただきます。