西郷隆盛「敬天愛人」、大久保利通「為政清明」をはじめ、島津斉彬、高崎正風らの手による当館が誇る書を中心に、墨彩による画など20数点をモノトーンの作品として公開します。
モノトーンとは、本来は単調、一本調子という意味です。美術では、単色、あるいは同系の色で表現された色調のことを意味します。中でも白と黒、すなわち無彩色によるモノトーンを組成する要素には、明度しかなく、彩度と色相は存在しません。それだけに、画面の構成や強弱、動静、調子などがはっきりと表れ、それらが作品の良否を左右する決定的な要素として働きます。
ことに書や水墨画は、西洋絵画の技法として発達してきたドライポイントやエッチングなどの版画、木炭による絵画などにはない、白い和紙と漆黒の墨が水を媒体として大胆かつ繊細に無限の表現を見せ、現実にはない風や音など、みる者が想像して初めて感じとることができる格調高い風合いを醸し出したりします。
今回、これまで展示の機会が比較的少なかった書を多数展示します。敢えて美術作品としての美しさに着目していただき、最小の色で無限の世界を造り上げた「刹那の妙」に心を遊ばせていただければ幸いです。