昭和8年(1933)に茨城県ひたちなか市(旧那珂湊市)に生まれた那波多目功一は,高校2年生の時に再興第35回院展に初入選して以降,日展などにも入選を重ねて早くからその才能を開花させました。卒業後はサラリーマン,そして企業家の道を選びますが,絵の制作はコンスタントに続け,40年頃からは再興院展を中心に出品,3度の日本美術院賞を受賞し,平成2年(1990)日本美術院同人となります。さらに12年には前年院展に出品した「富貴譜」で日本芸術院賞を受賞,14年日本芸術院会員となるなど,現代日本画壇において着実な地歩を固めています。
那波多目は,牡丹をはじめとする四季折々の花々や風景を主な題材としています。対象と真摯に向き合い,その本質を捉えようとする厳しい態度から生み出されたそれらの作品は,写実を基礎としながらも,豊かな抒情性と香り高い幻想性をあわせ持っています。
本展覧会では,高校時代の院展,日展初入選作から現在までの日本画作品61点を中心に,小下絵やスケッチなどを多数展示し,那波多目功一の約60年にわたる画業を回顧します。日ごろ見落としがちな何気ない風景,重厚でひっそりとした夢幻の空間,大地に根を張って精いっぱいいのちを煌めかせる花々のしなやかで力強い生命感…。ぜひ,この展覧会で,写実と幻想を融合させた那波多目芸術の魅力をご堪能ください。