1878(明治11)年11月11日、はるか1400㎞彼方の故郷を離れ、国営安積開拓のために久留米藩士が郡山に入植しました。開拓事業は郡山の近代化・発展の礎となりました。それより4年後の1882年、二人の画家が久留米に誕生しています。一人は、後に近代洋画壇に凄烈な作品を送り出す画家・青木繁(1882~1911)。彼の代表作となった「海の幸」(石橋美術館所蔵)は、明治浪漫主義の絶頂を示す作品として、重要文化財に指定されています。もう一人は、坂本繁二郎(1882~1969)。青木が短い生涯を閉じた後も、長く故郷で制作を続けた事により、久留米から多くの優れた画家が輩出しました。また、古賀春江(1895~1933)は、未来派、キュビスムなど新しい美術の流れを取り入れながら、独特の幻想的な画風を確立し、久留米の画家にも大いに刺激を与えました。
1975(昭和50)年、久留米市と郡山市は、安積開拓という先人の偉業を記念して、姉妹都市提携を結びました。入植130周年を迎える今年、久留米の石橋財団石橋美術館の所蔵品展を開催します。石橋美術館は、ブリヂストンの創業者・石橋正二郎(1889~1976)が収集した美術コレクションを展示する目的で1956(昭和31)年に開館し、久留米の文化振興に大いに寄与してきました。青木繁の「海の幸」をはじめとする上記3人の名品を紹介し、また久留米という豊かな土地が生み出したゆかりの画家たちの作品を併せて紹介することにより、両市のさらなる文化交流と発展を願いたいと思います。