細江英公は1933年に山形県米沢市に生まれ、幼少期に東京に移りました。18歳で写真家を志し、1960年前後に写真家によるセルフエージェンシー「VIVO」での作家活動を通じ、戦後日本の写真界に新しい独自の写真表現のあり方を指し示しました。
当時、記録を重視するリアリズム写真が時代を席巻する中、自己の内面的な意識を写真によって表現することを模索し、肉体を裸形のオブジェにまで開放した「おとこと女」、三島由紀夫を被写体とした「薔薇刑」、舞踏家土方巽をとおして東北の幻想的世界を創出した『鎌鼬』、人と生命のエッセンスを抽出した『抱擁』など1960年から70年代にかけて、次々と話題作を発表しています。
また、アメリカを中心にワークショップをはじめとする写真教育や写真のパブリック・コレクションを形成するなど社会的な活動にも積極的に関わり、写真を用いたさまざまな表現活動は国際的にも高く評価されています。
関西において19年振りとなる本展では、細江英公が写真家の道を歩むきっかけともなった、「ポーディちゃん」をはじめ、初期の代表作から70年代以降に発表した「ガウディの宇宙」や「ルナ・ロッサ」、「春本・浮世絵うつし」「死の灰」などの最新作まで、約200点のオリジアルプリントと資料を展示し、一人の写真家が50年以上もの間に繰り広げてきた写真の世界と、メディアとしての写真の将来的な可能性を追求します。