1917年の革命をはさむ10数年間に、めまぐるしいスピードで展開したロシア・アヴァンギャルドは、青春の息吹を感じさせる鮮烈な芸術運動でした。立体派や未来派といった西欧の最も新しい美術の動向をいちはやく取り入れつつ、一方で民衆版画などロシア土着の素朴な美術がもつ力強い表現にも敏感に反応し、革新的で個性的な作品をつぎつぎと生み出していきます。ロシアは当時最も過激な芸術の実験場のひとつであったと言えるでしょう。
出品作家の一人、カジミール・マレーヴィチは、ロシア・アヴァンギャルドを代表する作家の一人ですが、スプレマティズム(絶対主義)という純粋抽象の哲学を提唱し、西欧全体の美術に大きな影響を与えました。本展では10点の作品によって、その芸術の展開をたどります。また、グルジアで活躍したニコ・ピロスマニの作品がまとまって出品されるのも本展の大きな見どころです。素朴でありながら見る者の心を捉えて離さない強い表現力は、近年さらに評価を高めています。
ほかにも、タトリン、ブルリューク、ゴンチャローヴァ、リシツキーなど主要作家による作品によって、20世紀初頭に一瞬の光芒を放ち、美術の歴史に決定的な刻印を残したロシア・アヴァンギャルドの魅力を、存分に味わうことのできる展覧会です。