アトリエの窓の外に、一本のヤマボウシの木がある。 やわらかな新緑に目覚めて、初夏、白い花弁のような苞を幽玄に開かせる。 夏、鮮やかな緑の葉蔭に色づき始めた実を、鳥はたった一日のうちに啄んで食べていってしまう。やがて、赤いポップキャンディーのような実を地面にばらまき、夏は終わる。 義母は白い顔をして、ベッドに横たわっている。私は窓の外を見ている。 返し、うつすことをくり返す。そうすることによって薄れていくもののかたちや影。 そうして、私たちも薄れてゆく。 窓のこちら側と向こう側にはいつも、別々の時間が流れている。 窓外の時間。