「日本人なら誰もが知っている」とまで言われる「忠臣蔵」。1701年(元禄14)3月14日江戸中において浅野内匠頭長矩が吉良上野介義央を切りつけた「刃傷事件」と内匠頭の切腹、翌年12月14日夜半に赤穂浪士たちが吉良邸を襲撃して上野介の首をとった「仇討事件」。これらの史実に基づき、脚色した物語が「仮名手本忠臣蔵」、すなわち「忠臣蔵」です。忠臣蔵は1748年(寛延1)に人形浄瑠璃として初演、その後歌舞伎狂言となりました。設定を室町時代としたこの時代物の狂言は、上演すれば必ず当たる人気の演目であったことから、当時の煎じ薬になぞらえ「独参湯」(起死回生の妙薬の意)と呼ばれました。
忠臣蔵の題材は錦絵にも好んで描かれ、各段の象徴的なシーンを揃前にした舞台絵や、演じた歌舞伎俳優たちを描いた役者絵など実に多くの作品が生み出されました。
本特集では当館所蔵の錦絵コレクションを約30点ずつ、3期に分けてご紹介します。忠臣蔵をめぐる多様な表現、絵師による差異をお楽しみください。