本展では、第28回安井賞受賞作品(1984)をはじめとするさまざまな時期の代表的な油彩画、そのプロセスとなるドローイングや写真、授業の記録映像などで会場を構成します。
櫃田は、素描的な表現を起点としながら、絵画亜空間を手探り、手繰り寄せて、独自の絵画性を追求してきました。自身の目の前を通り過ぎた風景、ぽっかり空いた空間、空と地上の境界線としての山並み、手にしたものといった記憶の断片を集め、ドローイングから絵画へと抽象的に展開することで、古典的な枠を超えて「風景画」の可能性を広げてきたのです。それらは、戦後の原っぱを起点とする風景の変容を絵画という形式を通じて読み解く試みだったかもしれません。本展は、櫃田の制作と思考の過程、そこに錯綜する多様なコンテクストを、観客が体験する場となります。