写真家、野町和嘉は、1946年に高知県幡多郡三原村で生まれ、同地で少年時代をすごしました。高知県立高知工業高等学校を卒業後、写真家・杵島隆氏に師事。フリーランスとなった20代半ばでサハラ砂漠を訪れ、大地のスケールと、厳しい風土に生きる人々の強靭さに圧倒されたことがきっかけとなり、今日までドキュメンタリー写真を撮り続けてきました。
野町は、灼熱の砂漠や極限の高知、大河原泉の奥地など、あえて過酷な土地に出向き、そこで暮らす人々の日常を敬意のまなざしで、写し、壮大なスケールでその風土をとらえています。それらを撮り続けていく中で野町は、「残酷な環境では、宗教の支えがなければ人間は生きていけないいけない」と強く感じたといいます。精神的に砂漠化された現在の日本の状況もまた、過酷な環境といえるかもしれません。野町が写した偏狭の地といわれる風土の民が、聖地を求め、祈る姿は、肥大化した経済至上主義が二極化を生むこの厳しい時代にあって、よく生きるとは何であるのかを考えずにはいられません。
本展覧会では、サハラ、ナイル、エチオピア、アンデス、メッカ、イラン、そして最新シリーズであるガンガー(ガンジス)など、野町の35年に及ぶ世界各地の取材成果を約190点の作品によりご紹介します。多様な民族と人々の日常、暮らしに根ざした祈りの姿をご覧いただき、さまざまに思いを馳せていただければ幸いです。