長重之(1935年、東京・日暮里生まれ、足利在住)は、9歳のとき父の故郷である足利に疎開、以来足利に居住し、独学で絵画の制作を始め、高校在学中から足利のVAN洋画グループで発表を開始し、頭角をあらわします。
1962年、第14回読売アンデパンダン展に火夫に見立てた油彩の自画像を出品して本格デビューした長はきわめてユニークな作品をシリーズで発表します。この二つのシリーズはイベント<ロードワーク>やパフォーマンス<アタッチメント>という身体そのものの行為をともなったアクション・シリーズと平行して展開され、21世紀の今日の作品につらなっています。
ガス会社のボイラーマンや精神科病院の助手として勤務した経験に基づき居住する足利のガス会社社屋や江戸時代に建てられた自宅の廃材など事故と故郷の時間が堆積した素材を用いた作品は、具体的な事物と幾何学的構成や明快な色面構成が混交されたもので、現代美術においても同時の位置をしめるものです。
本展は1950年代の初期作品から最新作にいたるまでの油彩画、レリーフ絵画、インスタレーション、ドローイングの代表作をはじめ、パフォーマンス記録映像、イベント資料など約100点を網羅した回顧展であるとともに、栃木・足利という歴史的地理的特質と現代・世界の美術とが交叉する現在の時空そのものを立体的に鳥瞰する試みでもあります。