古来、人類はその生活を豊かにするために動物を食用にしたり、物の運搬に利用したりしてきました。特に動力としての動物利用は、近現代に電気やガソリン動力の利用がはじまるまで長く日常生活のなかで続けられたため、動物との関係は密接なものでした。
特に馬は、公家や武家、庶民にいたるまで日本人の生活文化に密接なかかわりを持つ動物です。人や物の移動・輸送、武士たちの軍事活動、村落における農耕や祈り、そして娯楽と、馬なしではこれまでの日本の歴史、文化を語れないと言っても過言ではありません。
このようにさまざまな場面で馬が活躍したほかに、人間は雄大に野山を駆ける馬の姿に憧れを抱き、美的な意匠として日本の工芸文化のなかで表現することも行ってきました。
今回この馬をテーマに古墳の馬形埴輪から室町時代の鞍、また江戸時代の馬の意匠の焼物や染織などの展示を通じて、馬と人とが織りなした歴史、文化をご紹介します。人類は近代化の結果、物的豊かさを獲得する一方、動物などの自然と生命とのかかわりを大切にしてこなかったと言われています。この展示が自然との協調に基づいて祖先が作り上げた文化や習慣を見つめなおし、これからの人類と自然とのあり方を考えるきっかけになれば幸いです。