当館の創立者松岡清次郎(1894-1989)が蒐集した東洋陶磁コレクションは、中国陶磁を中心とした国内屈指の洗練された鑑賞陶磁コレクションとして知られています。館蔵の日本陶磁コレクションも、美的な鑑賞性に富む江戸時代の肥前磁器、伊万里焼が主体となっております。江戸時代初期1610年代に、肥前国・有田において日本で初めて磁器の焼成を成功させた伊万里焼は、17世紀半ばから18世紀初頭にかけて特に色絵磁器の分野で華麗な様式展開を繰り広げていきます。
かつて「古九谷」と呼ばれ、1640年代中国の技術を導入して初めて焼造された初期色絵磁器とされる古九谷様式の「五彩手」や「青手」は、日本固有の意匠をあらわし独特の豪奢な雰囲気を醸し出しています。また、1680年代頃からは「濁手」と呼ばれる乳白色の素地に瀟洒な絵付けを施した柿右衛門様式の色絵磁器がヨーロッパへの輸出向けとして人気を博します。国内では、鍋島藩窯が将軍家への献上品などとして格調高い鍋島様式の色絵磁器を確立します。1690年代には、「オールドジャパン」と呼ばれ初めてヨーロッパで日本製磁器として認められた古伊万里・金襴手様式が、室内装飾としてヨーロッパの諸宮殿を飾りたてました。
今展では、館蔵の日本磁器コレクションより、有田の初期色絵磁器とされる「古九谷」を初め、ヨーロッパ向けの輸出磁器である柿右衛門様式や金襴手様式の古伊万里およそ50件余りを一堂に展観し、わが国のみならず世界をも魅了した和様の磁器「古伊万里」の魅力をご紹介するものです。