福澤諭吉(1835-1901)は、幕末明治の激動の時代を生きた思想家として、日本の近代化に大きな足跡をのこしました。中津藩(大分県)の下級武士の家に生まれ、大坂の適塾で蘭学を学んだ福澤は1858年、23歳の若さで江戸に蘭学塾(のちの慶應義塾)を開きます。その後、欧米各国を3回にわたって訪問。その経験をもとに『西洋事情』を著し、さらに『学問のすヽめ』『文明論之概略』などにより、近代日本の進むべき道を提唱しました。また、当時の知識人がこぞって官職を求めたなかで、生涯、無位無冠の一市民であることを貫きました。たとえ「異端」と見られても、思ったことを堂々と述べる勇気と気品―福澤は、そのような姿勢にこそ、文明の進歩があると信じた思想家でした。
本展覧会は、慶應義塾創立150年を記念して開催するものです。福澤諭吉の遺品、遺墨、書簡、自筆草稿、著書をとおして福澤の先導的な思想と活動を紹介するとともに、慶應義塾ゆかりの美術品などを展示いたします。