わが国の伝統芸能である能楽(能と狂言)は、室町時代初期の成立以来600年以上の歴史を誇る無形文化財です。2001年にはユネスコの「世界無形遺産」として認められ、その芸術性は新たな注目を集めています。
このたびの展覧会では、開場25周年を迎える国立能楽堂が収集した貴重な資料から、能・狂言の面や装束、絵画資料、謡本など約180件をご覧いただきます。これまで小規模での公開こそ行われてきた国立能楽堂のコレクションですが、一堂に披露されるのはこれが初めての機会となります。「幽玄」という独特の美意識に裏打ちされた能の優雅な趣と、「笑い」を基調とした狂言の軽妙な味わい。ふたつが織りなす能楽の奥深い世界にふれていただきたいと考えております。
とりわけ奈良は、能の大成者といわれる観阿弥・世阿弥父子を輩出し、また近代まで金春座の本拠地とされるなど、能楽ときわめて縁の深い地です。この奈良の地で、多くの方に能楽の魅力を味わっていただきたいと願うものです。