日本美術院は、明治31年(1898)、東京美術学校長を辞した岡倉天心を中心に、優れた芸術家の養成機関として創設されました。天心の理想は日本の伝統を継承しながらも新しい時代にふさわしい日本画を創造することであり、横山大観、下村観山、菱田春草らは「朦朧体」と呼ばれる、西洋絵画の影響の下に、伝統的な線描を排した新技法を試みるなど、日本画研究に打ち込みました。朦朧体が世間に容れられず、一時は経営難から活動休止を余儀なくされましたが、大正3年、前年の天心逝去を受け、その遺志を達成しようと大観が中心となり再興。「芸術の自由研究を主とす 教師なし先輩あり 教習なし研究あり」の宣言とともに画家たちは研鑽を積み、数々の名作や話題作を発表、日本画壇に多大な影響を及ぼしました。その後も今日に至るまで院展は優れた画家を輩出し、画壇を代表する団体の一つとして重要な役割を果たしています。
日本美術院は、当年創立110年を迎えます。これを記念し、本展では横山大観をはじめとする院展の同人たちの代表作を一堂に展観いたします。理想に向かい力を尽くした画家たちの熱気をぜひお感じ取りください。