今秋、八王子市夢美術館では「日本陶磁の精華 出光美術館所蔵品展」を開催いたします。これは昨年の「魅惑の東洋陶磁 早稲田大学會津八一記念博物館所蔵品展」に引き続き、工芸、特に陶磁器の魅力を一コレクションの作品で紹介しようとするものです。今回は、日本陶磁の華ともいえる桃山から江戸時代の陶磁器にスポットをあて、出光美術館の協力を得て所蔵品約70件を展示いたします。
出光美術館は昭和41年(1966)秋に開館、そのロビーからは皇居外苑が一望できる東京有楽町の帝劇ビル9階にあります。出光佐三氏が七十余年にわたり蒐集した美術品を核とし、美術館の歩みとともに充実していったコレクションは日本・東洋の古美術が中心で絵画・書跡・陶磁などが系統的に蒐集されています。
昭和期にはいってから本格的に蒐集が始まった出光美術館の陶磁器は、茶道具もさることながら、いわゆる鑑賞陶磁と呼ばれる作品を多数含み、現在では数千点におよぶわが国有数の東洋陶磁のコレクションとなっています。
この展覧会では出光美術館のコレクションから日本陶磁、なかでも桃山時代から江戸時代の造形的展開の中心をなしてきた九州や京都、さらには瀬戸や美濃という主要な窯業地の作品を概観できる構成としました。まず桃山時代の陶器としては、肥前地域(現在の佐賀県など)の古唐津と美濃地域(現在の岐阜県)の志野・織部を中心にご覧いただきます。そして江戸時代では、肥前の有田を中心につくられた伊万里・古九谷・柿右衛門・尾形乾山・仁阿弥道八・青木木米などの作品を選んでいます。とくに出光氏の収集に端を発している古唐津では、今回は「絵唐津葦文皿」をはじめ深鉢、徳利、猪口、花生、茶入などの魅力的な食器や茶器を紹介しています。古九谷様式の大皿の雄渾さ、そして近年研究の進んだ尾形乾山の作品も目に楽しいものです。秋のひととき、一幅の仙厓画賛とともに、これら日本陶磁の精華とも言うべき作品の数々をご堪能ください。