多治見、特に笠原町が、日本有数のタイル生産地であることはご存じでしょうか。
タイルの歴史は古く、古代文明の時代にまでさかのぼれますが、美濃にも美濃の豊かなタイルの歴史がありました。
仏教建築の装飾として日本に伝わったタイルは、中世には禅宗様の寺院に用いられました。禅宗様タイルの最古の例が、春日井市の定光寺源敬公廟にあります。しかし一般には、木造建築が主流のためかあまり普及しませんでした。その歴史をつないだのは茶の湯。茶道具としての敷瓦が、美濃や尾張で生産されました。また幕末から明治にかけては、瀬戸で始まった「本業敷瓦」が流行します。
一方、モザイクタイルの生産は明治時代に始まります。明治43年、常滑の伊奈初之丞がモザイクタイルを初めて発表した翌年には、多治見の長谷川淳一がタイルの試作品を作っていました。大正15年、多治見の加藤重保が日本建陶合資会社を設立し、製造が本格化します。昭和30年代には、一般家庭への普及と生産技術の向上により、タイル生産が飛躍的に発展し、多治見でも多くの製造業者が設立されました。そして今では、全国一の生産高を誇るモザイクタイルの生産地となっているのです。
本展覧会では、笠原町のモザイク浪漫館に収集されてきた多量のサンプルや関連資料に基づき、様々なタイルの姿をご紹介します。そして現代作家の作品やワークショップを通して、アートとしての美濃のタイルの可能性を探ります。