独特の温かみと味わいのある木綿布を素材とし、小物にいたるまで手作業で丹念に仕上げられた人形たち。人形作家与勇輝(あたえ・ゆうき)がつくる人形は、その愛らしさと凛とした美しさで多くの人びとを魅了しつづけてきました。
1937(昭和12)年神奈川県川崎市に生まれた与勇輝は、マネキン会社に勤めるかたわら1965(昭和40)年ごろから布の材質にこだわり、創作人形をつくり始めました。そして人形作家曽山武彦の木毛と綿でつくるほのぼのとした人形と出会い、1968(昭和43)年に師事しました。その後川本喜八郎、辻村寿三郎らとグループ展や個展で作品を発表する一方、人形絵本や映画の人形制作にも携わり、また2000(平成12)年にはニューヨーク、2006(平成18)年にはパリで個展を開催するなど国内外で広く活躍し、その芸術性は高く評価されています。
今回の展覧会では、昭和を代表する映画監督小津安二郎への敬愛の念を込めて制作された作品群をはじめ、与勇輝の代表作でもある子どもや妖精をテーマにした作品あわせて約130点を一堂に展示します。人形作家与勇輝の魅力あふれる芸術世界を余すところなくお伝えします。