眼の前に古いキモノがある。それは、一体、いつ作られたのか。どのような技術で作られたのか。模様がこのようなデザインなのはなぜか。誰が着用したのか。いかにして今日まで伝来したのか。キモノにまつわるそうした履歴を知りたい。そう思う人は少なくないでしょう。
キモノをはじめ染織品の履歴をひもとく―これが本展示で試みることです。注目するのは、日本の社寺に寄進され、今日まで伝来した染織品と、韓国の墳墓から出土し、再びその姿を今日に甦らせた染織品です。このようなかたちで守り伝えられてきた染織品は、使用者・着用者や時代についての情報を含む銘文をしばしば伴います。履歴をみずから多弁に語ってくれる染織品と言えましょう。
本展示では、このような特性をもつ日本の社寺に寄進された染織品と韓国の墳墓からの出土品を主として集め、その姿かたち、いわば「肖像」をつぶさに見つめて読み解くことで、履歴に迫っていきます。