近代日本画の巨匠、速水御舟(1894-1935)の展覧会を開催します。本格的な御舟展は1993年に東京で開催されて以来15年ぶりとなります。御舟は1894年(明治27年)東京に生まれ、早くから才能を発揮し、以下のようにほぼ4~5年毎に作風を変化させながら充実した画境を見せています。
(Ⅰ)大正初期の今村紫紅の影響を受けたおおらかな作風
(Ⅱ)その後の岸田劉生の影響をうけ、さらに独自の解釈を加えた「京の舞妓」に代表される細密描写の作風
(Ⅲ)大正後期の風景画等に細密描写と西洋絵画の写実の融合した作風
(Ⅳ)スランプの時代といわれながら幾多の名作を残した昭和初期
(Ⅴ)昭和5年外遊後の明るく軽やかな風俗画的作風や女性人物画
(Ⅵ)晩年の老成したなかに宗達の影響も見られ、華やかさを内包する水墨画の名品の数々
また御舟は、療養する姉を見舞い、平塚市に隣接する湘南茅ヶ崎にしばしば滞在し、湘南に取材する作品を多数残し、御舟没後、夫人は生涯を茅ヶ崎で過ごしました。御舟の生涯はわずか40年余でしたが、だれよりも成熟し、だれよりも達観した生涯を貫いたといえます。そして現代の若手作家にまで強い影響を与えています。
本展では、1910年(明治43年)作「小春」から、1935年(昭和10年)最後の作品となった「盆梅図(未完)」にいたる、新出の作品も交えた約120点の作品により、(Ⅰ)から(Ⅵ)の時代を追い、御舟の全体像に迫ります。