昨年9月、95歳で惜しくも逝去した日本画家・髙山辰雄の遺作展を開催します。髙山辰雄は1912年(明治45)大分県大分市に生まれ、東京美術学校日本画科を卒業後、松岡映丘門下の山本丘人や杉山寧らが結成した研究団体「瑠爽画社」に参加して研鑽を積み、師映丘没後は「一采社」を結成して同世代の画家たちと新日本画の創造を目指してさらなる研究を戦後まで続けました。その中から、ゴーギャンの制作に触発された色面構成による力強い作風が生まれ、やがて自然と人間に対する様々な想いを心中で手探りするような主題を重厚な作風で描き出しました。精神的密度の高い人物画や風景画は晩年まで衰えることなく描き続けられますが、其の根底には生きることへの積極的な肯定と、生きてゆく人間への深い共感が見て取れます。そして、生涯をかけた絵による人間探究の試みは、絵画の高みを示すものとして、今なお高い評価を受けています。
本展は、没後一周忌にあたり、髙山の初期から絶筆までの遺作約100点を一堂に集め、髙山芸術の軌跡をたどるとともに、その稀有な画業を追想するものです。