平山郁夫画伯は1930年、広島県尾道市(旧・瀬戸田町)に生まれ、瀬戸内海の美しい風土と家族の愛情に育まれながら幼少期を過ごしました。1947年に東京美術学校(現・東京藝術大学)へ入学して前田青邨画伯(1885年-1977年)に師事、画家への道を歩み始めます。そして今日、現代日本を代表する芸術家として、また人類共通の遺産である文化財の保護活動など多方面での活躍は広く知られているところです。
しかし、そこへ至るまでの道程は決して平坦ではなく、14歳の中学生時代には、学徒動員中の広島で原爆に遭遇、その後も長い間後遺症に苦しみながら制作を続けてきました。その中で仏教の興隆と伝播の道をシリーズとして描き、さらには日本文化の源流を求めて東西文化交流の道シルクロードへと制作を発展させて、数々の名作を発表しています。
この数十年にわたるシルクロード取材の中で、中国唐代の僧・玄奘三蔵の足跡を辿りながらスケッチをかさね、新たな世紀のスタートとなる2001年元旦、奈良・薬師寺玄奘三蔵院画殿に《大唐西域壁画》を奉納しました。この壁画を多くの人々に見てもらいたいという平山画伯の強い願いのもと、各場面を絵画作品として50号に収めて描かれた作品が当館の《大唐西域画》全13点です。
本展では、佐川美術館開館10周年を記念し、国内最大となる当館所蔵の平山郁夫作品の中から本画を中心に展示し、かつてない規模でシルクロード各地を巡ります。
また特別展示室では、奈良薬師寺の玄奘三蔵院画殿の堂内を《大唐西域画》に合わせて再現し、原寸大の大下図を始め豊富なスケッチパネルなどで平山画伯の壮大な画業を「玄奘三蔵、求法の道」として辿ります。