濱田庄司(1894-1978)は、最初の人間国宝(重要無形文化財技術保持者)となった陶芸作家であり、民藝運動の提唱者でもありました。濱田の作家活動は、「京都で道をみつけ、英国ではじまり、沖縄で学び、益子で育った」という濱田自身の簡潔な言葉がなによりも的確に示しているでしょう。
栃木県益子での活動で知られていますが、作家としての始まりはイギリス西南部のセント・アイヴス、最初の個展もロンドンで開催しています。渡英前は、東京高等工業学校窯業科を卒業後、京都市立陶磁器試験場で助手として釉薬の研究に励んでいました。この研究者としての知識があったからこそ、民藝運動の中心人物として各地の窯を調査し、その成果を作品に活かすことができたと考えられます。沖縄では、古窯壺屋で働く職人たちの健やかな作陶生活や、その自然に心魅かれて、制作上のインスピレーションを得ています。そして、益子では、こうした経験を集約して濱田の作風を確立しました。また、その大きな力によって、益子焼そのものが変容し、いまなお受け継がれています。
本展覧会は、川崎市市民ミュージアム開館20周年を記念し、川崎に生まれた陶芸家濱田庄司の足跡をたどるものです。