この展覧会は、茨城県近代美術館が所蔵している作品から、比較的まとまったコレクションがある安藤信哉の油彩画、小堀進の水彩画、永瀬義郎の版画を、各作家20点以上をもって慧66点で展示構成するものです。
近代的なフォルムの人物画や静止画を描いた安藤信哉は明治30年(1897)千葉県に生まれました。3歳のとき、父が教員として赴任するため一家とともに茨城県の常総市に移り住みました。
同地の小学校・中学校卒業後、一時教職に突きましたが、退職して洋画を学びました。昭和4年帝展に初入選を果たし、以後画家として活躍する一方、聴覚障害者の美術教育にも貢献してきたことでも知られています。
雲のドラマなど大自然の光を大胆・明快な筆法で描いた小堀進は、明治37年(1904)茨城県(潮来市)に生まれました。千葉県の中学校を卒業後、洋画を学んでいますが、茨城県に戻り、小学校教員となっています。昭和4年に上京、同じく教員を務めながら、白日展、日本水彩画会展などに出品を続けました。昭和15年、小学校退職、同志8名で水彩連盟を結成、以後本格的に水彩画家として活躍を続け、昭和49年には水彩画家初の日本芸術院会となりました。
流麗なフォルムと幻想的またはロマンティックな作風で知られる永瀬義郎は、明治24年(1891)茨城県(桜川市)に生まれました。土浦中学校卒業後、洋画を学んでいます。東京美術学校彫刻家塑像部の予備科に入りましたが、版画は独学で始めました。大正2年に文芸雑誌『聖杯』(『仮面』)の同人になり、創作版画の草分け的存在となっています。大正11年に刊行された『版画を創る人へ』は、大きな反響を呼びました。
本展は、これら茨城県に深いゆかりのある作家の作品を、ある程度まとまった作品数をもって展示をすることにより、今日の人々の視点から見直していただこうとする展覧会です。