香は、香りによって臭気を除く効果から、不浄を払うものとして宗教儀礼で重視され、仏教では花瓶、燭台とともに香炉は重要な器として扱われました。
日常の衣食住に直接かかわる器と違い、香木は高価であったこともあり、香炉は行事や儀式での使用、あるいは富裕な人々の嗜好の中で用いられたという特徴があります。それだけに、青銅製の重厚な香炉や豪華かつ優美な文様が描かれた蒔絵の香炉など、製作当時の技巧を尽くした作品が残されています。
一方で装飾を省いた仏具の中の香炉、茶の湯で用いられた陶磁製の素朴な香炉などの存在は、用途に応じた材質や器形をもつ香炉の実態を伝えるとともに、香炉という器の世界の幅広さを示しています。
今回の展覧会は、古代から近世にかけて日本、朝鮮、中国で作られた、金属器、陶磁器、木漆器などの作品約150点で構成します。また、香合など香に関わる作品や香炉が描かれた絵画なども展示いたします。東アジアの地域によって異なる特徴を、香炉の様々な造形とともにこの機会にご鑑賞下さい。