20世紀初頭より、西欧では社会の変革にともない女性の地位および役割が変化しますが、あわせて女性のファッションも劇的に変化します。コルセットの着用をとりやめたことにより、女性の肉体は「解放」され、衣服の簡素化と機能性のさらなる追求がすすみました。
今回の展示では、こうした動きを先導したデザイナー、ポール・ポワレとマリアノ・フォルチュニィの仕事に焦点をあて、コルセットを放棄した1910年代を中心とした時代の動向とともに彼らの衣装の革新性を探ります。ふたりはともに、ファッションに限らず、モダンアートや装飾美術といった同時代の美術動向から、過去や異国の芸術についてまで、ひろく芸術を取り巻く状況とその変化に深い関心をそそぎ、こうした動向からインスピレーションを得て、全く新しいドレスをうみだしました。そうした意味では、彼らのドレスは、19世紀と20世紀の女性服をつなぐという重要な役割を担っていたともいえるでしょう。ここでは、18、19世紀にかけて着用された西洋のコルセットを使用したドレスやコルセットそのもの、そしてヴィヴィアン・ウエストウッドをはじめとする現代を生きるデザイナーたちの衣装も展示します。本展が、今もなお私たちを惹きつける「コルセット」というモチーフについて改めて考える機会ともなれば幸いです。