13~14世紀にイタリア全土で活躍したジョット・ディ・ボンドーネ(1267年頃~1337年)は、西洋史上初めて繊細な感情と立体的な肉体を備えた崇高な人間像を描き、三次元的な物語空間を生み出しました。それは西洋絵画の流れを大きく変えただけでなく、自然の探求者レオナルド・ダ・ヴィンチや、感情に生きたゴッホ、色と形を追い求めた20世紀のマティスなど、後世の画家たちがそれぞれの視点から立ち戻る原点であり続けました。数々の伝説に彩られたジョットは「西洋絵画の父」とも呼ばれ、最初期の壁画が残るアッシジのサン・フランチェスコ聖堂は世界遺産に指定されています。
本展では、日本でほとんど見ることのできないジョットの作品4点を招来し、あわせて代表的な聖堂壁画を写真パネルで展示します。また、フィレンツェの諸機関からほぼ全点日本初公開となる後継者たちの祭壇画など30点も集めました。時代は庶民の信仰とペスト禍の不安が火をつけた聖母崇拝の高揚期。フランスの華麗な宮廷写本や隣町シエナの情感あふれるゴシック絵画にも影響を受けながら、次第に美しい聖母を作り上げていく初々しいルネサンスの夜明けのフィレンツェ絵画をお楽しみ下さい。