東京国立近代美術館は、国際交流基金と京都国立近代美術館との共催により、「現代美術への視点6 エモーショナル・ドローイング」展を開催します。この展覧会は、アジア、中東出身の作家16名の作品により、今日のアートにおけるドローイング的表現の現状や可能性を検証しようとするものです。
そこには、30代前半の若手から、すでにアジアの、あるいは今日のアート界を代表するようになっているアーティストまでが含まれています。
出品作品が用いている技法はさまざまです。紙の上に線を中心にした形象を描く狭義のドローイングはもちろんのこと、水彩、アニメーション、インスタレーションなどが展示されます。
内容も多岐にわたっています。顔をモティーフにしたもの、幼少期の記憶に基づいたもの、日記的な表現、深層心理を引き出そうとしているもの、子どもの落書きに触発されたもの、イメージが生み出す連想を楽しむもの、花や鳥を描いたもの、日々生まれてくる着想を描きとめたものなどなど。
もちろん、そこには共通点があります。それは、彼らの作品が、ドローイング特有の脆弱さ、未完成であることを許すおおらかさ、あるいはどんな表現ジャンルにおいてもつくられるという意味での根源的な在り方に寄り添うことで、自らの感情や情動を引き出そうとしているところです。
彼らが目指しているもの、それは、よりよく完成・完結している点で評価されるアートではなく、感情・情動を引き出し、それをなまなましく定着させる点において評価されるアートです。そのような、理性よりも感性をより重視する作品が、今日、とりわけアジア、中東の世界においていかなる位置を占め、またどんな意義を持っているか、それを検証するべく、あるいはご紹介するべく、この展覧会は生まれました。
なお本展は、東京国立近代美術館が1984年より開催しているシリーズ「現代美術への視点」の第6回目にあたります。