同時代のアートの動向を探るシリーズ「アート・ビジョン」では、これまで精力的に活動を展開する作家達の彫刻、セラミック、テキスタイル、平面作品を個展形式で紹介してきました。
2008年、7年のブランクを経て紹介する7人目の作家は、ことばや文字をモチーフに制作しているアーティスト イチハラヒロコです。
彼女のテーマは「愛」と「笑い」。ことばそのものはある例外を除いてはいたってシンプルで短いけれど、そのユーモアあふれる軽やかなフレーズの中には、複雑怪奇な人の心(感情)が凝縮されているかのようです。イチハラヒロコの織りなす世界には、観る者にかつての記憶や今の自分、はたまたこれまでにない感覚を呼び覚ます可能性を見ることができます。
ことばを書き続けて20年となる2008年の今展では、メイン会場のインスタレーション作品で、ある《ことばのつみ木》を来館者が手に取り、各々がオリジナルのことばを会場で作る場も設えます。この積み木を手にした多くの人が、ことば作りの面白さだけでなく、自分の伝えたい事は何か、伝わることばとは何かを改めて考える機会となれば幸いです。