卓越したデッサン力と研ぎ澄まされた画面構成をもとに、日本の西洋絵画にモダンな感覚と凛とした臨場感溢れる画風を完成した日本近代洋画の巨匠、小磯良平。
写実の画家として有名な小磯ですが、挿絵画家として名高い一面を持っており、小説の挿絵を描くときは、そのイメージにふさわしい場所を訪ねて写真に収めるなど、事前に描くものを取材し作品の構想を練り上げました。
本展覧会で紹介する水彩画は、小磯が聖書の物語からイメージを膨らませ唯一想像だけで制作したものです。
これらは、日本聖書協会からの依頼によるもので、1971年の刊行口語訳聖書の「装画」として、小磯が絵にしやすいところ、面白い構図になりそうなところなど独自の視点で選んだ旧約・新約あわせて32の場面が、水彩で描かれています。
今回は、装画とともにそれぞれの場面に工夫を凝らした何枚もの下絵や、西洋的雰囲気に満ちた油彩画やリトグラフ、愛用していた油彩パレットなどもあわせて紹介します。
清涼感溢れる瑞々しい水彩画の世界の中で、小磯がなぜその場面を選び、どの様なイマジネーションを膨らませて描いたのか、思いを馳せながらお楽しみください。