このたび、山口蓬春記念館では、夏季展「山口蓬春・近代日本画への歩み-蓬春モダニズムを知る-」を開催いたします。
山口蓬春は大正12年(1923)に東京美術学校を卒業後、やまと絵の大家である師・松岡映丘が主宰する新興大和絵会の同人となり、伝統的な技法を学びながら優れた作品を生み出してゆきます。しかし新しい日本画の創造を目指す蓬春は、やがて独自の絵画表現を模索し、それまでにない斬新な手法の作風を発表します。特に戦後になって発表された作品にはマチス、ブラックをはじめとする近代の西洋画の作風を強く意識したと思われる表現が、画面に顕著になって表れており、その作風は「蓬春モダニズム」と形容されました。そしてこの取り組みは、後年の格調高い作風に至る蓬春の画業の中でも重要な位置を占めるものと推測できます。蓬春は著書の中で「いつの時代にも、新しい日本画の創造と言うことを心掛けて、果敢に前進しようする作家が居なければ、藝術は進展しないのである。時代や社会は常に進み動いて居るのであるから。」と述べているように、現状に甘んじることなく、常に新しい日本画の創造に取り組んでいったのです。
本展覧会では、蓬春の多岐に亘る画業の中でも、特に戦後の作品に焦点をあてて、「蓬春モダニズム」と形容された時期から後年に至るまでの過程をご紹介するとともに、あわせて季節の素描なども展示いたします。