1930年代にパリで起こったシュールレアリスム(超現実主義)は、夢や無意識、非合理といった「心」の奥深くに潜む世界を解放することによって、人間性の追求と新しい美の創造を目指した革新的芸術運動でした。シュールレアリスムが特に意識したのが、人間の心の無意識の領域でした。普段は意識されることのない無意識の世界、それは時折、夢の中で垣間見る不思議なイメージの世界です。そこには不安や恐怖、絶望などが渦巻いていますが、それは反面、エネルギーに満ちたダイナミックな世界でもありました。
代表的なシュールレアリストの中から、今回はダリとデルヴォーの版画に焦点を当て、超現実主義の世界に迫ります。
■ダリ
スペインのシュルレアリスト。
ダリは20世紀の代表的な画家であり、シュールレアリスムの重要な担い手でした。連作集『シュールレアリスムの思い出』は、「ダダ、シュールレアリスムの思い出」に始まり、「シュールな美食学」に終わるシリーズであり、ダリ独特の主題が思いがけない組み合わせにより展開し、濃密な幻覚の世界を繰り広げます。
■デルヴォー
ベルギーのシュルレアリスト。
デルヴォーは、死とエロスが交錯する独自の世界を一貫して描きました。画面には、郷愁と哀愁をにじませる裸婦が常に登場します。彼女らは物静かで無表情であり、冷ややかで女神のように超然としています。『女神ヴァナデの崩壊した神殿の再建』は、神話の装いをとりながら、幼年時代の思い出に通じる母への秘かな思いを籠めています。