小学校2年生の国語の教科書『こくごニ下赤とんぼ』(光村図書出版)に「一本の木」(岩崎清)という説明文が掲載されています。この文章の冒頭に登場する「ムナーリさん」とは、ミラノに生まれ、ミラノを拠点としたアーティスト、ブルーノ・ムナーリ(Bruno Munari、1907-1998)のことです。日本では、20世紀を代表するイタリアのデザイナーとして、絵本やグラフィックアート、プロダクトデザインの仕事で知られていますが、彫刻、評論、建築の分野でも先駆的に活躍しました。さらに、昨今ではこどもたちへの造形教育の領域を手がけたことに注目が集まっています。
多岐にわたる活動を行ったムナーリですが、自然の観察など自らが得た体験と知識に新しい視点と柔軟な発想をくわえながら、造形の原理を追求した理想的な制作姿勢は一貫しています。ムナーリが考案した造形プログラムでも、こどもたちに五感をつうじて発見する機会をあたえ、そのなかで造形の原理を伝えています。
本展では、体験からうまれたムナーリの造形世界を体験的に感じていただきたいと思い、こどもの城造詣事業部と日本ブルーノ・ムナーリ協会のコレクションを中心に、ブルーノ・ムナーリを6つの要素から紹介するとともに、造形プログラム《アートとあそぼう》のワークションプを実施し、それぞれの 参加者の作品と活動の記録も展示します。また、展示室内に遊具や絵本の一部を直接手にとることができる場も設けます。本展覧会各事業を通じて多彩なムナ-リの魅力を感じ取っていただければ幸いです。