この展覧会は、第8回国際陶磁器フェスティバルMINOの同時開催企画として、同フェスティバル陶磁器デザイン部門で第1回から第3回まで審査員を務め、その設立にも尽力した森正洋の作品を陳列してその功績とデザイン理念を振り返り、陶磁器デザインの本質を問い直すものです。
1927年、佐賀県塩田町に生まれた森正洋は、「自分が日常で使用したい器」をテーマとして、様々な日常の器を生み出してきました。土味とよばれるものを表面に押し出した器が多く存在し使用されてきたなかで、森がデザインした陶磁器は、シンプルで飽きのこないデザインとともに機能性を兼ね備えた器として評価されています。森の作品は110点以上もグッドデザイン賞、いわゆるGマーク選定を受けました。さらに2005年11月、残念ながら森は78歳の誕生日を目前にこの世を去りましたが、今なおその作品は世代を超えて愛され続けています。
デザイナーの仕事は、社会の要求や要望に応えながらそこに自己アイデンティティーを表現する、つまりは人々がより豊かな生活を送るために何らかの提案をすることです。それは優れたデザイン性はもちろんのこと、大量生産が可能で、廉価で入手しやすいことが、多くの人の生活を豊かにするのではないでしょうか。森はその理念を崩すことなく、そして自分が使用したいということをいつも念頭におき、陶磁器をデザインし続けてきました。
そのような森のデザインした器は、現在でも新鮮味があふれており、老若男女を問わず人気を博し、スタイリッシュな日常を演出しています。本展覧会では、初期から晩年にかけての森の作品と、彼の最後の大きな仕事のひとつである無印良品の器を展示します。さらに、森と影響関係にあった海外デザイナーであるスティーグ・リンドベリやカイ・フランク、長きにわたり勤め先としてきた白山陶器の関係者、また彼の指導を受けた愛知県立芸術大学関係者の当館所蔵作品も展示し、森正洋の仕事を多面的に検証していきます。