わたくしといふ現象は
仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です。
優れた童話作家であり詩人である宮沢賢治(一八九六~一九三三)の文学作品は、現在世界的にも高い評価を受けています。
鉱物学や農学に明るく、郷土岩手を愛し農民のために尽くすかたわら、たゆまず書き続けた作品には、自然に対する深い理解と命あるものすべてに向けられた愛情があふれています。
なかでも彼の遺した数多くの童話は、独特の言葉の響きとともに、子どもから大人まで広く親しまれてきました。
その豊かなイメージは、今なお多くの絵本作家やアーティストたちを刺激してやみません。
本展は宮沢賢治の作品世界を視覚表現を通して紹介するものです。
第一部では、賢治の理想の生き方を謳った「雨ニモマケズ手帳」をはじめとして直筆原稿や書簡、さらに、芸術をこよなく愛した作家自身が描いた水彩画によってそのひととなりに迫り、第二部ではその作品の絵画表現に取り組んだ五十名のアーティストによる絵本原画を紹介します。
アーティストの数だけ存在する賢治文学の広大な宇宙に誘われることでしょう。