武者小路実篤は、自分が小説を書く時は、まず会話から湧き出てくると言い、自ら戯曲作家を任じていました。大正時代、実篤は対話や戯曲作品を多く発表していますが、この頃はまた、明治後期に始まった新劇運動が盛り上がった時期でもあります。
晩年にいたるまで、多くの戯曲を執筆した実篤ですが、その作品はユーモアあり、シリアスあり、辛辣な風刺もあり、様々な世界を描いています。そこには、人間の計り知れない力を信じる、ゆるぎない実篤の姿勢が根底にあります。こうした数々の作品を、関連資料や舞台化の記録などでご紹介し、実篤戯曲の魅力を探ります。