アンドレ・ドラン(1880-1954)は、フランス近代絵画の巨匠として知られている画家です。ブラマンクやマティスらと1905年ころからフォーヴィスム(野獣派)という原色を積極的に用いて、それまでの写実を基本とする絵画表現に変革をもたらす前衛的な会が運動を先導した画家として、今日に至るまで高く評価されています。フォーヴィスムの画家として有名なドランですが、1920年代に入るとプサンなどの古典に傾倒し、古典主義的な画風に移行し、また、ロシア・バレエの舞台装飾も手がけ、幅広い制作活動を展開します。そして、1943年には、フランス・ルネサンスの作家フランソワ・ラブレーの物語『パンタグリュエル』のための挿絵を木版で制作しました。ラブレーのおとぎ噺のような世界が、トランプやタロットなどから影響を受けたと思われる一版多色刷による極めて美しい木版画によって彩られています。
ドランの木版画30数点のほか、同じ『ガルガンチュア』物語のアントニ・クラーベ(1913-2005)のリトグラフによる挿絵も展示するとともに、さらに、近年収集された新収蔵作品もあわせて紹介いたします。