現在のイラン・イスラム共和国を中心とした地域では、紀元前6000年頃に北部から南西部にかけての地域で土器が作られ始めました。最初期のものは、土に植物などの混ぜものをして成形した無文の粗製土器類で、ザグロス山脈中の遺跡で確認されています。前6~5000年頃には、表面に化粧土をかけ顔料で点や斜線などの簡単な幾何文を描いた彩文土器が出現します。同時に東部地域にも生産が拡大し、それぞれの地域で特色ある土器文化が始まりました。前5~4000年頃、メソポタミア文化の影響を受けて、西部地域とイラン高原中央部で新しいタイプの彩文土器が誕生しました。それは、砂混じりの細かい胎土の表面を磨研や化粧土で調整し、黒や褐色の顔料で幾何文や山羊・鳥などの動物文を描いたものです。前3~2000年頃には、北部や南部地域にもそれらの影響をうけた土器が誕生しています。前1000年頃には、彩文土器は姿を消し、赤色、灰色、黒色などの胎土の表面を磨いた磨研土器が各地で作られました。特に、カスピ海南岸地域では、人物やこの地方に生息する瘤牛の姿を表した、いわゆる形象土器が特徴的です。
一方金属器については、恵まれた鉱物資源を利用して既に前4000年頃には金属精錬が行われていたことが明らかになっています。特に前1000年前後のイラン北部・北西部の文化には、種類豊富な馬具や用途不明の特殊器形など従来にない特徴があります。動物意匠が多用されていることから、北方から移動した民族の影響とも考えられますが、盗掘によって知られた遺物もあり不明な点が多く残ります。
今回の展示では、高田早苗コレクションから、古代イランの土器と青銅器を厳選して約20点を展示します。長い歴史を持ち東西の文化交流に重要な役割を果たした地域の古代の造形の多様性をお楽しみください。