昭和55年(1980)秋、奈良の東大寺大仏殿の昭和大修理が落成し、落慶法要が盛大に執り行われ、「昭和大納経」(大方広仏華厳経六十巻)が奉納されました。「華厳経」は東大寺の根本経典ですが、天平の大仏開眼時の「六十巻本」はわずかに数巻が現存するに過ぎないため、この「昭和大納経」による全60巻の奉納は約1200年ぶりの文化大事業でした。写経には当時を代表する521名の書家が参加し、題簽は西川寧、安藤聖空、日比野五鳳、青山杉雨、金子鴎亭、村上三島の文化勲章受章者・文化功労者6名によって書かれました。また、東山魁夷、高山辰雄、大山忠作など、その半数近くが文化勲章受章者・文化功労者であるという日本画を中心とした69名の見返し絵、更には、漆芸過・人間国宝の松田権六、大揚松魚両氏による経篋(経巻を収める箱)が制作されております。
このように、当時を代表する書家、画家、美術・工芸家が総力を挙げて取り組んだ「昭和の美の結晶」が、関係者の強い希望により再び公開されることになりました。奈良から江戸時代の経典や絵画などの東大寺寺宝とともに展示される本展を是非この機会にご鑑賞下さい。