佐藤先生と小磯先生の関係は、新制作派協会という当時帝国美術院を脱退した新進気鋭の作家集団結成により始まります。新制作派協会は、1935年の帝展改組に反対した無監査級の有志が第二部会を立ち上げるも、帝展改組失敗による第二部会の帝展復帰に反対した小磯先生をはじめ猪熊弦一郎氏ら9名が1936年に創立した団体で、当初は絵画部のみの設立でしたが、1939年に佐藤先生、舟越保武氏ら7名を加えた彫刻部を設立し、現在では新制作協会と名称を改め、絵画、彫刻、スペースデザインの三部門で形成されています。
この新制作派協会での出会いは、絵画と彫刻という分野の相違はあるものの、お互い具象作家として刺激しあったことは想像に難くなく、佐藤先生ご自身も「数々の人物画の中での私にとって大きな存在になっているのは、35歳の作《練習場の踊り子達》(東京国立近代美術館)や38歳の作《斉唱》(兵庫県立美術館)などである。若い男女たちのひたむきな表現姿勢と表情に深い抑制を与えている小磯芸術の姿勢が、もうこの若い時代に呼吸していたことを見せつけられた思いである。」と仰っているように、小磯先生の作品に深い感銘を受けたことがわかります。
平面と立体という異なる空間表現を生み出す二人ですが、作品に対する真摯な姿勢と起用したモデルへのまなざしが、作品を通して両作家の共通する部分を提示してくれるのではないでしょうか。小磯先生は、早くから自らが選んだモデルや家族を継続して起用しているように、佐藤先生も自分の家族や好みのモデルを選んで何度も繰り返し同じ人物の作品を制作されています。二人にとってモデルは身近な日常的な存在であり、また制作意欲の原点であることから、モデルに対する思いにおいても、互いに共通点が見出せるのではないでしょうか。
本展では、小磯先生と佐藤先生の作品に共通してみられる人物の一瞬の表情や、内面を捉えた作品を中心に構成します。今までにない平面と立体によるシンフォニーが生まれ、具象という同じ道を歩み続けた二人の作品が互いに響き合い、それぞれの作品の魅力が高められることとで、多くの人々により深い共感を与えるものと信じます。
いままで開催されたことがない夢の二人展を是非ご覧いただきたいと思います。