緑の風の中、飯森山公園周辺でこどもたちの声が聞こえるこの季節、当館内では、土門の代表作のひとつである「江東のこども」などの「こどもたち」シリーズを展示いたします。紙芝居、おしくらまんじゅう、らくがき、チャンバラごっこ、コマ回し…など、懐かしい昭和を思い出させるこどもの写真は、当館ではおなじみですが、それに加えて、近年新たにプリントした作品も展示いたします。これらの中には、生前発表されずに、近年になって写真集に掲載された子どもの作品も含まれています。
どの写真からも、日本のあちらこちらで、貧しくてもみんなが一所懸命たくましく生きていた、昭和の日々そのものが浮かび上がってくるようです。
土門拳は、昭和52(1977)年にかつて自分が撮った写真を振り返って「今は、かつて撮ったような子供の写真はもう撮れない。天真爛漫な子供、子供らしい子供は、今の小学生の中から見いだそうとしても、もうみつからない。試験、学習塾というような、子供を締め付ける社会の風潮が、子供から子供らしい大半を奪ってしまったのである。」と書いています。すでに今から30年以上も前に土門が言っていたこの言葉は、さらに深刻に切実に現代社会にも響いてきます。