福岡道雄(1936年、堺市生まれ)の'80~'90年代の彫刻作品10点を特集展示します。生後まもなく中国にわたった福岡は、終戦後に滋賀県高島郡(現高島市)マキノ町海津に引き揚げ、中学2年までの5年間をそこで過ごしました。多感な少年時代の水辺の記憶は、'70年代半ば以降の「風景彫刻」シリーズ(身辺や記憶の風景を樹脂製の黒い直方体の上に再現する作品)に直接・間接的に反映されており、一昨年新たに本館に収蔵された一連の作品には、いずれも作者の内面と呼応するかのような水面の微妙な表情がとらえられています。本展はその10点が一堂に展示される貴重な機会であり、また戦後関西を代表する現代彫刻家と滋賀県との意外な繋がりがうかがえるという点でも興味深いものだといえるでしょう。