柔らかい陶土に白釉が掛けられ、手馴れた筆致の唐草文が特徴的なこの茶碗は、現在のベトナムで十六世紀に作られたものです。「紅安南」と呼ばれたこれらベトナムの五彩は、日本の茶人に好まれました。そのおおらかさは、唐物や高麗物とは違った魅力です。
そして今回の特集陳列では、タイの漆器「蒟醤」も合わせてご紹介します。蒟醤とは、タイ語の「キンマーク」、檳椰樹=「マーク」の実と石灰をまぜ、蔓草の葉に巻いて噛む=「キン」という東南アジアに残る習慣を指す言葉が由来です。これらも江戸時代、貿易品として日本に運ばれ、茶入や菓子器などに用いられました。茶の湯の世界で好まれた東南アジアの漆器・陶磁器を是非ご覧ください。