イリヤ・カバコフ(1933- )は、旧ソ連のドニエプロペトロフスク市に生まれ、現在はニューヨークを拠点に国際的に活躍しています。現代作家としてのカバコフは、大規模なトータル・インスタレーションで知られていますが、旧ソ連時代には非公認芸術家として活動するかたわら、絵本の挿絵画家としても活躍していました。本展覧会は、カバコフが1950年代後半から1980年代後半にかけて手がけた絵本約100冊とその原画約1,000点を、会期の前半と後半にわけて展示し、今なお鮮やかな色彩をはなつ美しい原画を紹介するものです。旧ソ連で出版された絵本には、社会主義国の子どものあるべき姿を教えるといった啓蒙的な内容のものから童話や詩を扱ったものまで幅広くありますが、想像力豊かなカバコフの挿絵のおかげで、これらの絵本はその内容以上にいっそう魅力的なものとなっています。
カバコフによる絵本原画を世界で初めて本格的に紹介する本展覧会は、これまであまり知られていなかった挿絵画家としてのイリヤ・カバコフを知る機会となるだけでなく、旧ソ連時代に作られていた絵本と原画をご覧いただける貴重な場となるでしょう。